うごきにふれる
2023.03.06
臭いの理由
『くさい。。。』
皆様は動物園や水族館に訪れた際、こう思ったことはないでしょうか?
生きものの排便や特有の体臭。普段では感じることが出来ない臭いに、そう思ってしまうことは間違いではありません。
しかし、私は常々こう思うのです。
「くさいだけで終わるのはもったいない」
何故臭うのか、その理由を少し考えてもらうだけでも生きものに対して理解度がぐっと深まるはずです。
今回は「うごきにふれる」ゾーンでも感じることのできる臭いの理由を3つ紹介します。
【食べるものと排便の頻度】
ここで紹介するのはケープペンギン。食べているものは主に魚です。
・人間と違い、魚介類のみを食べるので、嗅ぎなれない独特のにおいからくさいと言われることが多い。
・鳥類でもあるため、哺乳類に比べ排便の回数が多い。
独特な臭いの排便を回数多く行う、それがケープペンギンの臭いの理由です。ちなみに、このような理由から、飼育環境をなるべく清潔に保ち、また館内に臭いが充満しないよう、ペンギン水槽ではニフレルトップクラスで多く清掃しています。
【マーキング】
続いてはコツメカワウソです。
食性は肉食で、主に魚や甲殻類を食べています。ケープペンギンの話から、臭いの独特な便がでることがお分かりいただけたと思います。 コツメカワウソはそれだけではなく、排泄の際に直腸の両側にある肛門腺から、臭いの強い分泌液が糞や尿に加えて出てきます。この臭いでコツメカワウソは、自分の縄張りを示しているとされています。
自分の縄張りを示すため排便の際に臭いの強い分泌液を出している。
それがコツメカワウソの臭いの理由です。
【排便の場所】
「うごきにふれる」ゾーンでは、排便の臭いは強いのにあまり気付かれていない生きものがいます。それはカピバラです。
カピバラは草食ですが、盲腸内に共生しているバクテリアの働きにより、消化の難しい植物もしっかりと分解することが出来ます。そのため肉食の糞の臭いより少しはましですが、臭います。
では、なぜ気付かれにくいのか?
その理由は排便をする場所にあります。カピバラは水辺近くに生息している生きものです。縄張り内の陸地が汚れないよう、排便や排尿は水の中で行ないます。排便が水中にあることで、人間が臭いを感じる物質が空気中に出にくくなり、カピバラの臭いは気付かれにくくなっています。
臭いのある便を出すが、水中にするため気付きにくい。
これがカピバラの臭い(あまり臭わない)の理由です。
いかがだったでしょうか。かなり長々と話してしまいましたが、ここまで話したものは一例で、臭いの理由は様々な理由が重なり合ってできています。ですので、ここで話した内容よりもっともっとたくさん臭いの理由は存在しているのです。
最後に、くさいの先には生きものの生態に近づける理由がたくさんあります。もし動物園や水族館などでくさい、と感じたときは、「なんでくさいのか?」、「どんな臭いなのか?」、疑問に持ってただけると、とても嬉しいです。
欲を言えば、その疑問を我々キュレーターにお話しして頂けると飛んで喜びながらお話しさせていただきます。
それでは改めてになりますが最後にもう1度、、、
くさいだけで終わるのはもったいない。