うごきにふれる
2022.12.10
ママキュレーターになって③ ~ペンギンに学ぶ子育て~
6月8日のキュレーターブログで、"ママキュレーター目線"でのアメリカビーバーの出産と子育てのお話をしましたが、いかがでしたでしょうか。特に子育て中のママさんに共感してもらえてたら嬉しいです!
ちなみに、私は助産師さんから『出産直後でも落ち着いてるね~!』と言われたのですが(内心はもちろんドキドキバクバク笑)、今回はこの経験があったからこそ"落ち着いているように見えた"のかもしれない、と思ったことを書いていきたいと思います。
2018年のこと。ニフレルでは一年間で7羽のケープペンギンが誕生しました。
ペンギンはペアになったオスとメスが交代しながら子育てをします。ヒナが1日でどれぐらい体重が増えているかを記録し健康状態を確認する必要があるので、毎朝体重を測定するのですが...
親鳥から総攻撃を受けます!
これが痛い!!
厚手の上着を着て手にグローブをつけているのですが、
めちゃくちゃ痛い!!
小さな体のどこにそんなパワーがあるんだ!?!?と思うぐらい、
とにかく痛いんですっ!!!!!
ごめんごめんと言いながら親ペンギンとの攻防の末、なんとか体重を測り終えたあとはいつもぐったりしていました。
ただ、子どもを狙って得体の知れない自分たちの何倍もある大きな生きものが家(巣)に押しかけてくる、そう思うと怖すぎますよね...。
それでも子どもを守ろうと立ち向かってくるペンギンは、とても勇敢な生きものだと思います。
ヒナのエサは何かというと、親ペンギンが飲み込んで胃の中でドロドロに溶かした魚。親ペンギンはヒナがピーピーと鳴いて催促すると吐き戻して口移しで与えます。父ペンギンにもらったり、母ペンギンにもらったり...ママになる前は何も考えず見守っていましたが、今はめちゃめちゃ経済的!と思ってしまいます笑。
また、当たり前なのですが、ヒナたちはそのようなエサをもらっているので、かなり臭います。 裏を返せばこの臭いは親ペンギンたちがしっかりエサを与えて子育てを頑張っている、という証拠なので、過去の私に文句を言わず頑張って掃除しなさい!と伝えたいです。
実は、この年に生まれた7羽のうち2羽はキュレーターが親代わりとなって育てました。
当時新入社員だった私も関わらせてもらうことになり、卵をバックヤードにある孵卵器に入れ、ハシ打ちがはじまった!とドキドキしながら見守り、無事に孵化したときは、ほっと胸をなで下ろしました。
が、ここからが大変でした。
というのも、ヒナのエサは前述のとおりで、それを再現しなければなりません。アジを何匹も三枚おろしにし、大きな骨を取り除いて、水を入れてミキサーにかけてドロドロにします。こうしてできた「アジペースト」を適温まで温めていくのですが、温めすぎれば固くなってつみれのようになりヒナが食べられませんし、冷たすぎればヒナがお腹を壊してしまうかもしれないので、ちょうどいい温度を探すのがとても難しかったことを覚えています。
さてできた!ちょうどいい温度になった!さあヒナたちエサの時間だよ~~!!!と、エサを親鳥のクチバシ代わりのシリンジ(針のない注射器)に詰めて与えようとしますが、お互いに初めての経験なのでなかなかうまくいかず、その間に冷めて温めなおし...なんてことも何度かありました。温めすぎてつみれになって作り直したこともあり、今思い出しても泣けます...。
また3時間おきにエサを与えていたのですが、やはり親鳥が育てるヒナと比べると、体重の増え方が低かったりして、先輩キュレーターたちと頭を悩ませたりしました。
給餌以外にも、うんちのチェックをしたり、プロポーションのチェックをしたり... こうして思い返すと、
まさに今やっていることと同じ!
アジペーストの調温も、調温ポットがあれば楽だったのかも!と今更ながらアイデアが浮かんできます。もし次ペンギンを育てることがあるとすれば、以前とは別の立場と目線で考えながら行動できるかもしれません。このときの経験や、『産まれたらまず焦らずに落ち着くことと!』と先輩キュレーターから聞かされていたのも、しっかり我が子の子育てに活かされています。
ヒナたちは現在はすっかり大きくなり、7羽のうち3羽は他の園館に旅立っていきました。元気に旅立ってくれて、とても嬉しいです!